虫歯を放置したままにしておくと、虫歯の細菌が歯の内部まで感染して、やがて歯がボロボロになって弱くなったり、歯ぐきが膿(う)んできたりします(歯内感染)。この歯内感染がひどくなると、最悪の場合、歯を抜くことになってしまいます。
虫歯が進行し、歯内感染した歯を再び自分の歯として使えるように除菌する治療が歯内治療(根管治療)です。歯内治療は症状が進むほど難易度が高くなり、治りにくくなります。また、治療術式によって病気の予後が大きく変わってきます。ひどい虫歯がある場合は、手遅れにならないうちに適切な治療を受けることが大切です。
歯は以下の4つの部分に分かれています。
■エナメル質
歯の表面を覆っている、硬くて白い殻の部分(お口を開けたときに見える歯は、このエナメル質です)
■象牙質
いわゆる「歯の本体部分」で、軟らかい歯質でできています(硬いエナメル質によって守られています)。
■歯髄
歯の内部の中央にある空洞部分。歯の根の尖端に小さな穴が空いており、歯ぐきから分かれた細い血管や神経が入り込み、この空洞部分を満たしています。歯髄は、歯の根に行くほど細くなり、樹のように細かく枝分かれした複雑な構造をしています。
■セメント質
歯の根の表面を覆う薄い層。
歯は生きている
歯は一見すると硬い石のように見えますが、実は歯の内部には神経や血管が存在しており、他の組織と同じように体から栄養をもらって健康を保っています。神経のある健康な歯はみずみずしく、柔軟で、感覚もあります。
しかし、虫歯で歯内感染すると、感染した歯髄の組織(神経と血管)をきれいに除去しなければいけなくなります。神経や血管を除去した歯は歯ぐきからの栄養が絶たれ、歯としての性質が大きく変わってしまいます。歯から感覚やみずみずしさが失われ、もろくなってしまいます。その結果、神経を除去した歯では虫歯や歯の破折などがおこりやすくなるのです。
■神経を抜いた歯の特徴
歯の表面にできた虫歯は、時間とともに内部に進行し、歯の内部が細菌感染して、徐々に重症化していきます。歯の構造はとても複雑なため、細菌の内部感染も複雑に進行していきます。
- 【I期】
- 虫歯が歯の内部の空洞(歯髄)まで達すると、この空洞全体が一気に細菌感染します。
- 【II期】
- この状態を放置しておくと、感染はさらに周囲に波及し、病状を徐々に深刻化させます。
- 拡がりは以下の2つです。
- 1 歯の根の歯質への感染拡大(歯根部歯質感染)
- 2 歯ぐきへの感染拡大(深部歯周組織感染)
- 病状がI期からII期へ進むと治療の難易度が高くなり、治療の成功率が低下します。
歯内治療(根管治療)とは、虫歯が進行して、内部まで感染した歯を除菌して歯の感染をなくし、再び自分の歯として使えるようにする治療のことです。歯内治療は、内部感染の状態や歯の内部構造の複雑さなど条件の違いによって、治療にかかる時間が大きく変わってきます。軽症の場合は1~2回ですみますが、重症の場合は数ヶ月を要することもあります。治療の成功率は、内部感染が進むほど低下していきます。一般的にI期からII期へ症状が進むほど治療の難易度は高くなり、治癒率も低くなっていきます。
歯内治療は肉眼で見えない歯の内部を扱うため、技術的に大変難しく、治療環境の違いによって治療の成功率が大きく変わってきます。歯内治療に適した専門性の高い環境が整備された医院で、じっくりと治療に臨むことが歯内治療を成功に導くことにつながっていきます。
保険の歯内治療(根管治療)
日本の健康保険で定められた範囲内でおこなわれる歯内治療です。術式は簡潔で、使用できる薬剤や処置法に制限があります。
精密な歯内治療(根管治療)
難易度が高いとされる歯内治療を成功させるために実施される、安全性の高い歯内治療です。欧米の歯内治療ではスタンダードとなっている世界基準の術式で進められます。マイクロスコープや歯科用CTなど、先進医療機器による精密な診査、治療効果に優れた様々な器具・薬剤を医学的必要性に応じて適宜使用することができます。専門性の高い治療環境を整えることで安全に精度の高い治療を実現できるため、治療の成功率が高まり、病気の再発率も低く抑えることができます。
【主な特徴】
3D-CT / マイクロスコープ / ラバーダム / 隔壁 / ニッケルチタンファイル / 保険外の除菌薬剤/保険外の術式
精密な歯内治療(根管治療)の料金表はこちら
いちょう通り歯科では、保険で行う歯内治療と保険適用外の歯内治療(自費診療)の、2種類の治療方法を実施しています。
(1)保険による歯内治療(根管治療)
健康保険で定められた要項に基づいて行う歯内治療です。
(2)精密な歯内治療(マイクロ根管治療)~自費診療~
大切な歯をきちんと残すため、当院では精密な歯内治療(マイクロ根管治療)に力を入れています。当院の精密な歯内治療を支えているのは、歯内治療の水準が高い欧米と同レベルの治療環境です。徹底した滅菌対策を施した衛生的な環境のもと、高品質な医療機器や薬剤を使って診査・治療を進めることで、歯内治療の成功率を高め、従来では抜歯するしかなかった歯を残せる可能性を飛躍的に高めています。
歯科用CT
従来の歯内治療は、2次元のレントゲン写真とドクターの感覚だけに頼っておこなわれていたため、精度が低く、再発→抜歯となるケースも少なくありませんでした。当院では、歯科用CTを使用して歯内治療をおこなっています。根管の位置や形態など2次元のレントゲンでは把握できないデータも、CTでは3次元で正確に取得することができるため、精密な治療を実現できます。
マイクロスコープ
マイクロスコープという顕微鏡を用いることで、肉眼では見えづらい根管内部の状態を拡大して確認することができるため、歯内治療の確実性・安全性が高まります。
ラバーダム防湿
無菌状態をつくることが、歯内治療成功の最大のポイントです。そのために、当院では「ラバーダム」という器具を使用しています。ラバーダムは、歯に装着するゴム製のシートで、これを装着することで細菌や唾液が根管に入るのを防ぎながら治療を進めることができます。
感染した神経を取り除き、根管の長さを測定します。
根管内部にある、虫歯菌に侵された象牙質などを完全に取り除きます。
根管の汚れを完全に取り除いた後、細菌が残らないよう消毒して無菌化します。
根の尖端まですき間なく薬剤をつめて密閉したら歯内治療は終了です。
歯内治療(根管治療)が終わったら、咬めるようにするために、歯根の上に土台を入れてかぶせ物を装着します(補綴-ほてつ-治療)。