「歯医者は悪くなっていくところ」
こう考えている方は、きっと多いことでしょう。歯科医師である私自身も、そう考えている時期がありました。しかし、歯科医師として数多くの病気を目のあたりにするなかで、健康であることの大切さ、そして病気を予防することの重要性を認識するようになりました。
当院では、「予防歯科」を診療の柱にすえて患者様のお口の健康管理にあたっています。
当院を訪れた最初の理由は、「病気を治すため」であったとしても、治療とともに健康の大切さに気付き、5年後・10年後の自分のお口の健康を考えたとき、「健康を維持していくためには一体どうしたらいいのか?」と真剣に考えることもあるでしょう。
そんなとき、将来を見すえて患者様とともに、きちんとお口の健康を守っていく医療こそが予防歯科です。予防歯科は、招いてしまった病気を治療する「過去を穴埋めする医療」ではなく、患者様とともにこれからの健康をつくっていく「未来創造型の医療」であります。
虫歯や歯周病は早期発見・早期治療が重要ですが、それよりもっと大切なのが予防です。予防の基本は毎日の歯みがきですが、これだけでお口の健康を末永く守っていくのは難しいことです。虫歯・歯周病を寄せつけない口腔内環境を保つには、歯科医院での定期的なメインテナンスが欠かせません。予防のためのメインテナンスには、以下のようなメリットがあります。
予防歯科・メインテナンスを受けることで虫歯や歯周病の原因を排除でき、発症・再発を未然に防ぐことができます。
病気になっても早期発見し、早期治療が可能なため、治療の痛みや通院時間、治療費などの負担を軽減できます。
定期的にクリーニングを受けることで、お口のなかをすっきりした状態に保てます。口臭予防にも効果的です。
当院では、快適なお口の健康づくりのために、一人ひとりの患者様に合った予防プログラムをご提案しています。当院では、予防歯科を以下の3つのカテゴリに分けて考えています。
(1)予防歯科処置:リスクの高い方に実施する積極的な予防処置
(2)メインテナンス:歯科衛生士による定期的なプロケア
(3)予防生活管理:お口を含む全身の状態の管理
お口や体の健康状態や日々の生活習慣などから虫歯や歯周病になりやすい方には、必要に応じて予防処置をおこない、病気になるリスクを積極的に抑えていきます。
お口の健康を維持し、病気の発症や進行を抑えるために、歯科衛生士が定期的におこなうプロフェッショナルケアを「メインテナンス」と言います。メインテナンスでは、まず患者様のお口のなかを確認し、患者様自身による口腔清掃(セルフケア)についてのアドバイスを差し上げます。
次にお口の状態に合わせて、歯科衛生士によるプロフェッショナルケアをしていきます。はじめに歯の表面に付着したプラーク・歯石などの汚れを除去し、続いて歯の表面や歯周ポケット内に存在する成熟した細菌を丁寧に除去していきます。
日々生活するなかで、お口の状態は少しずつ変化していきます。毎日の歯みがきのみがき残しによって汚れが蓄積し、年齢とともに深くなる歯周ポケット内では病原性の高い細菌が徐々に増えていきます。メインテナンスでは、歯科衛生士によるプロフェッショナルケアでお口のなかを一掃することで、快適で安定した口腔環境にリセットしていきます。
1口腔清掃指導
患者様自身による日々の口腔清掃(セルフケア)の状態を評価し、問題がある場合には、改善に向けた清掃指導をおこないます。
2スケーリング
歯の表面に付きはじめた歯石を除去します。
3PMTC
健康な方のお口には、病気をおこさない「いい細菌」が安定した状態で定着しています。これに対し、虫歯や歯周病になりやすい人のお口のなかには、病気の原因になる「悪い細菌」が多く存在しています。これは、お口が悪い細菌が増殖しやすい環境になっているためで、悪い細菌の増加とともに、お口のなかは病気になりやすい不安定な状態になっていきます。
PMTCでは、歯の表面やすき間などを滑沢に研磨することで、歯の表面に付いたバイオフィルムを除去し、病気の原因となる悪い細菌を取り除いて、いい細菌が定着しやすくなるよう、お口の環境を整えていきます。
【メインテナンスの間隔】 お口が安定した状態を保てるよう、一人ひとりの患者様に合ったメインテナンスの時期を設定します。基本的には安定期から不安定期に入りかかる時期におこなってお口のなかをリセットし、安定期を維持していきます。通常、1~3ヶ月の間隔でメインテナンスをおこないます。
同じ患者様でも、そのときの体調によってお口の状態は大きく変化します。ストレスの多い時期、体調のすぐれない時期、あるいは老化によっても、お口の状態は変化していきます。このような場合は、メインテナンスの間隔を短めに設定することが必要です。その時々のお口や体の状態に合わせて、メインテナンスの時期やメニューを最適化し、快適なお口の状態を維持していきます。
お口の健康づくりのためには、全身の健康づくりという視点が大切です。当院では、虫歯や歯周病の予防のため、一人ひとりの患者様の生活習慣をベースにした予防的な生活指導を実施しています。
毎日生活をしていると、「自分の生活習慣がいいのかどうか」を客観的に判断することができなくなってしまうことがあります。当院の生活予防管理では、健康であるためには何をなすべきかについてアドバイスを差し上げています。
真の予防とは、患者様自身が健康の大切さを自覚し、自分の生活を振り返り、日々を正していくことであると信じています。人生はとても長いものです。「無理なく、毎日、少しずつ」丁寧に生活していくことが、いちばん大切なことだと思います。